そのサヨナラが呼んでいる

2/5
4126人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「さとっ…み?」 ハッ! 考え込んでいると、下から光輝の苦しそうな声が聞こえ慌てて視線を落とした。 …え? 目を疑う光景に血の気が引いていく。 光輝の首にきつく絡む手。 その手は紛れもなく私の手だった。 指が食い込み、光輝の顔が歪んでいる。 「あっ…!」 我に返り手を離すと、光輝が顔を背け激しく咳き込んだ。 …体はまだ、繋がったままなのに。 私は…何をしたの? 『一番目になれないならいっそのこと…光輝と繋がったまま一緒に死にたい。』 先程そう思った事が頭をよぎる。 咳き込む光輝から体を離し、私はただ震えた。 …何をやってるのよ。 私は…私は…!! 慌てて服を着て、光輝の背中に頭を下げた。 「ごめんなさいっ…ごめんなさい光輝っ!ごめ……」 後は言葉にならない。 いつから流れていたのか分からない涙を拭い、部屋を飛び出した。 「里海!!」 後ろから光輝の声がする。 だけど振り返れるわけがなかった。 ひたすら走って、だけど走れば走る程に… 自分に絶望した。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!