4127人が本棚に入れています
本棚に追加
知った時にはすべてが遅かった。
あなたへの愛は引き返せないところまで来てしまっていたから。
目を閉じただけであなたの全てを思い出せるくらい。
例えばそう。
タバコを吸うあなたの横顔。
私の髪を撫でる優しい指、大きな手。
柔らかくてサラサラした茶色い髪。
広い背中。
長い足。
私を抱き上げる力強い腕。
薄くてキレイな唇。
熱く見つめる、メガネの奥の優しい瞳。
そのどれもが私だけのものだと信じて疑わなかった。
あなたが月に一度しか私のマンションに泊まらない事も。
キスマークを付けるのを嫌がる事も。
本当は気づいていたのかな。
気づかないフリをしていただけかもしれない。
だけど知りたくなかった。
こんなにあなたなしでは生きられなくなってるのに。
こんなに愛してしまったのに。
今更遅過ぎる。
もうどうにも出来ないよ。
私はあなたと別れられない。
あなたにいつか捨てられても、あなたを嫌いになんてなれない。
あなたが、別の人のものでも――――
最初のコメントを投稿しよう!