そのサヨナラが呼んでいる

3/5
4126人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
どこかも分からない公園で、呆然とベンチに座る。 どのくらい走ったのか。 コートを着ていない体は信じられないくらい冷たい。 でも冷たくて良い。 …頭を冷やせるから。 そっと自分の手に視線を落とした。 まだカタカタと震えるこの手が、光輝の首を絞めたのだ。 そこには確かな殺意があった。 …首に指の跡が残るかもしれない。 そしたら奥さんにバレてしまうかも。 …私はなにがしたかったの? 愛する人を殺そうとするなんて狂ってる。 それ程までに愛してしまったなんて…。 光輝の一番になれないのは当然だ。 こんな怖い女…誰だって愛せるわけがない。 自分で自分が怖い。 愛してるのに光輝が憎いなんて。 …私は、壊れてる。 震える手を握りしめ、真っ黒な天を仰いだ。 目の端から大粒の雫が絶えず零れ落ちる。 目の前に広がる真っ黒な空は、私の心みたいだ。 真っ黒で…星ひとつすらない。 …私のこの狂った愛にも…希望の光は差し込む事はないのだ。 冷たい空気を吸い込み、そっと目を閉じた。 …このまま死ねたら良い。 真っ黒な私には似合いの、暗黒のこの地で――――。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!