殺人事件

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「いや、すまん、たいした物じゃない。そうか…鶴さんはゴルフしないから解らないか。これはゴルフの時使うマーカーだよ」 「はあ…よく分かりませんけど…それから何か手掛かりになりますかね?」 「いや、これだけじゃね…ただゴルフをしない人が持ってる可能性は極めて低いだろうね」 「って事は…犯人はゴルフをする?」 「いや、まだ解らんよ・・・・・。林さん、昨夜掃除した時には間違なくこれは無かったですよね」 と、久米はルーム係の林に聞いた。 「はい、まあ小さな物なので絶対とは言い切れませんが…」 と、林は少し不安そうな顔で答えた。 「男はどんな感じだった解りますか?」 「すみません・・・・見てません・・・・・」 「何か特徴的な事は?」 「いえ…まったく解らないんです」 「車で彼らは?」 「ええ…車両はチェックしてますので・・・確か黒のスポーツカータイプだったと思います」 「男は先に部屋を出た様ですが、気がつきませんでしたか?」 「ええ…すみません。全く気がつきませんでした」 ルーム係の林は申し訳なさそうに答えた。 「参ったな…」 久米は厳しい表情で呟いた。もし時間が8時間以上経過していれば車で逃げる範囲が関東はおろか本州全域になってしまう。 「とにかく、早く身元を割り出さないと駄目だ。鶴さん、この一帯で日系人を雇っている会社を至急探してくれ」 「解りました。大至急身元を割り出します!で、警部は?」 「私はこのボールマーカーに書いてあるゴルフ場に行ってみたいと思う」 久米はそう言うと、急いでパトカーに乗り込んだ。 殺人のあったモーテルからゴルフ場までは、車でおよそ1時間以上の場所だ。 高速インターを出て国道を右折、しばらく走った後、すこし狭い山道に入った途中にゴルフ場があった。 「鉾田カントリークラブ」 そこで久米が見たのは、意外な状況だった。 「なんだ?県警のパトカー・・・・?」 クラブハウスの中に入ると、うろたえた雰囲気の従業員が十名以上、そして恐らく地元の警察官であろう。何やら話しかけている・・・。 普段のゴルフ場のロビーとは思えない、物々しい雰囲気に包まれていた。 「どうしました?!」 久米は歩み寄りながら叫んだ。 そして・・・・思わぬ事実が判明した。
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