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「え、ええ・・・間違いないです・・・」
支配人の澤田は少し困惑した表情で返事をした。
「で、そのマーカーがどうしたんですか?」
杉本が久米に対して聞いた。
「ええ・・・・少しでも事件の手がかりになれば良いと思いましてね・・・・・こちらに来て見ました。それから殺された女性は恐らく日系人です。」
「え?日系・・・?」
支配人の澤田と杉本が少し驚いた表情になった。
「で、その女性の特徴はなにか?」
澤田は久米に聞いた。
「いえ・・・特にこれと言った特徴は・・・・。ただ今お話をお聞きしている限りではそちらにいる皆さんのどなたか行方が・・・・?」
「はい、うちで雇ってます、長谷川シルビアという子が・・・・昨晩から行方不明になってまして・・・・」
「長谷川シルビア?もしかして・・・・日系の方ですか?」
「はい・・・。ここでは日系ブラジル人を8名雇ってます。そのうちの一人が・・・・・」
「ブラジルから・・・来てるわけですか?」
「ええ・・・・」
バブル期、ゴルフ場は慢性の人手不足に悩んだ。
そこでキャディ雇用について、人件費が比較的安くすむ海外から派遣されてきた外国人を雇用するゴルフ場が増えた。
ブラジルにはかつて日本人が開拓を夢みて海を渡った時代があった。そして現地でそのまま移住した日本人も数多く、そしてそんな時代の背景から日系ブラジル人もまた数多く存在する。
折りしも時代が変わり、今度はブラジルから日本に出稼ぎに来る人が増えた。
当時不況に喘いでいたブラジルにとって、日本で稼いだお金を2割送金すれば家族は生活できた。
しかし、彼女達は普通のキャディとは違う。キャディ業務が終わっても、ゴルフ場が終わる最後まで色んな仕事をしなければならなかった。キャディ業務はあくまで仕事の一つに過ぎない。
それでいて賃金は日本人キャディの半分だった。
いくら住居代込みとはいえ・・・・彼女達の日本での生活はけして楽ではなかった。
彼女達は所謂日系3世。ただ総じて皆小柄で日本人女性に近かった。
ただ彼女達の特権は若い事だ。若いので何より日本語をマスターするのが早かった。
中でも18歳の藤原ユーリは来日3ヶ月で殆ど日本語を理解し、しゃべる事が出来た。
ただ・・・一人を省いては。
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