①公式戦

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北関東(S)峠 全長約8キロの一車線道路が物語の舞台(S)峠だ。S市とA市をつなぐ連絡道路は夜になると全くと言っていいほど車の交通量はなくたまにラリー系の走り屋がくるくらいで2輪にとってはかっこうのスポットに姿を変える。 平日でも多くのライダーが集まり賑わう峠は金曜日の晩ともなると普段の倍以上の人が集まっていた。 しかし今日の人数はその比ではなかった。麓の折り返し地点はもとより各コーナー毎にギャラリーが鎮座し、地元ナンバーではないマシン達も集まっていた。 それはこの日が第2金曜の夜であったからだ。 (S)峠の王(K)率いるジャスティスの公式戦が行われるのが第2金曜の晩。 腕に自信のある者はジャスティスのメンバーとまず争い(K)への挑戦権を獲る。しかもジャスティスのメンバーも強者揃いの中久しぶりの(K)への挑戦者が現れたとなればギャラリーも自然と集まるというものだ。 上り側、スタート地点ではスターターが2台の前で両手を水平にしてライダーの合図をまっていた。 パラララと乾いた音を発て白煙を吐き出し辺りをヒマシ油独特の匂いで包む。蒼白いHIDがスターターを照らす。久しぶりにジャスティスのメンバーを打ち破った挑戦者。名は小島司(ツカサ)23才、YAMAHA独特のパラレルツインの2st、TZR250(1KT)を駆る。 対する王者(K) ブォンブォンとアクセルに従って歯切れよいエキゾーストは王としての威圧を放つ!HONDAのメカニズム、カムギアトレインがモーターにも似た音を発する。87年式VFR400黒い車体は威圧感すら覚えた TZR250 VS VFR400 かつて時代を馳せたFⅢ勝負さながらの再来をギャラリー達は今か今かと待ち望んだ。 挑戦者、王者、互いにヘルメットのスクリーンを閉じた。 パタン、カチ ミラーシールド越しにも鋭い視線がわかるようだ。 スターターの水平に保たれた手の平が3を表すとすぐに 前にならえの格好で2がつげられた。 ガチャン 個々のマシンのギヤがローに入る 周囲を緊張が支配した 1… 高く上げられた手が地面を指差す GO!!! パンパァーン、 エキゾーストノートの爆音の中ギャラリーの歓声と共に公式戦は幕を開けた。
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