378人が本棚に入れています
本棚に追加
/166ページ
その人を見たのは一度きりだった。
こっそりと大切な人の後を付けた、
ギラギラと月が輝く月夜だった。
その年の月光は原因不明の明るさで、
確かニュースでも取り沙汰されるくらいだった。
月夜に透き通る白い肌、
それは生き物としての質感なんて持たずに、
無責任なまでにただただ美しかった。
生きている匂いさえ感じさせない、
あの人。
そう、
あの魔女は、
あの時から私の大切な人の胸に、
解けない魔法をかけた。
最初のコメントを投稿しよう!