舞い戻る、紅の血

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「こらこら歳、そんなに睨むんじゃない。怯えているじゃないか。」 不安が顔に出てしまったなかおじさんが穏やかな声で黒王子に言う。 「…ちっ」 と言いながらこちらを見据えていた顔を逸らした。 (舌打ちーー;;もうやだ帰り たいよー!!) 心の中で泣きながら喚いているとおじさんがこちらに向き直った。 「私はこの壬生浪士組の局長、近藤勇と申す。君の名前を教えてくれないか?」 (壬生浪士組??やけに設定が細かくない?) 丁寧に自己紹介してくれたおじさん…いや近藤さんに対して向き直り、三つ指を付きすらりとした動作で頭を下げた。 「緋村 朱音(ヒムラ アカネ)と申します。この度は助けて頂いてありがとうございました。」 その動作に2人と今度は美少年までもが思わず見惚れてしまった。 教育熱心な家庭で育った朱音は礼儀・作法・知識・教養共に申し分ない。 ただ元の性格があれなので本性を知っている人から見ると二重人格にみえる。 「いやいや、お礼を言われるほどの事はしていないので頭を上げてくれ」 「そうだ。俺達はおまえを助けた覚えはない。」 (え?) 冷たい声が響き頭を上げ黒王子を見ると先ほどと同じ冷たい眼差しで朱音を睨んでいた。 「こら、歳。」 「貴様、長州の間者じゃねぇだろうなぁ」 近藤さんの声は聞こえてないかのように朱音に問いかける。 「長州…??」 「答えによっては斬るぞ」 そういって腰にある刀を抜き、朱音にその切っ先を向ける。 「ちょちょちょ、ちょっと待って!どこまで本気なの??新撰組ごっこも良いけどあたしを巻き込まないで!!そんなオモチャの刀だしたって怖くな(シュンッ)」 続く言葉は朱音に向かって振り下ろされた刀によって遮られた。 いや、何も発せなかった。 振り下ろされた刀によって朱音の長く美しい髪が数本切り落とされたからだ。
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