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―――文久1年
はぁ…はぁ…はぁ…
山の中を走り抜ける1人の少年
いや、少年の格好をした少女
服は血まみれで、左肩を大きく斬られている。
その傷口からは血が次から次へと溢れてきて腰に差してる漆黒の刀へと伝って地面へと落ち、少女への道を示していた。
貧血からか、先程の光景を思い出してか少女の顔は真っ青で、瞳孔が開きっぱなしになっている瞳からは涙が溢れていた。
その瞳は深い紅色。
瞳だけみると異人のようだ
「いたぞー!!あそこだ!」
遠くから声が聞こえた
ちくしょう!!
何故、あたし達が…
少女は立ち止まり腰にある刀に手をかけた。
あたし達はこんな力いらない!!!
平和に暮らしたいだけなのに!!
父上…母上…
約束は守れそうにありません。
そのかわりこんな悲劇はもう繰り返さないよう…
この血はここで断ち切ります。
刀を鞘から抜くと、瞳と同じ深紅の刃が出てきた。
「…!!あの小僧まさか…おい!!まずいぞ!早く捕まえろ!!」
声は近くまで迫っていた。
許さない
絶対に、許さない
呪ってやる
恨んでやる
この醜い感情に覆われた魂は強い呪縛で縛られあたしの願いを叶えてくれるだろう
少女は深紅の刀身を愛しそうに撫でた
お願い。
あいつらを…幕府を、終わらせて!!
どうか、復讐を…!!
瞼を閉じた目から頬を伝って落ちた涙がその刃へと一粒落ちた
次に目を開けたと同時に少女は自分の心臓へと刃を一突きし、短い生涯を自分の手で終わらせた。
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