0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
なぜ妾はー…
「この世に生を受けたのだー…?」
少女は欄干から食い入るように月を見上げ呟く。
「紅凜様、お身体に障ります。」
「ああ…」
紅凜と呼ばれた少女は興味無さそうに返事をするだけだ。
「あのー…」
「なぁ、愁花」
遮るように口を開く。
「なぜ、人はこの世に生を受けるのだろうな?」
先ほどひとりごちた言葉を繰り返す。
「なぜ、ですか…。」
「妾はわからん。」
きっぱりとした声とは裏腹に、どこか困惑が伺える顔。
「人はなぜ、生きるのか。なぜ必死に足掻き、人を傷つけまで我が身を可愛がるのか、妾にわからぬ。」
月を見上げたままだった瞳がゆっくりと伏せらる。
_
最初のコメントを投稿しよう!