宵闇

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スッと閉じた瞳が開かれ、同じように月を見つめた。 月に照らされたその姿は、まるで銀糸の羽衣に包まれているかのように輝いて見える。 透き通るような白い肌は、月光を浴びてキラキラと輝いていて、どこか幻想的な雰囲気を出している。 「人は…」 そんな少女に見とれながらもはっきりとした声で言の葉を滑らせた。 「人は、ひとりでは生きられない生き物です。」 「ああ…」 「それ故、人は孤独を恐れるのではないでしょうか…。」 だから傷つけ、悲しみに陥れてでも他人に側にいて欲しいのではないか、孤独が嫌だから足掻き、他人を傷つけるのではないか、と。 愁花の思想を聞き、ゆっくりと月から彼女へと視線を移してくる。 色素の薄い、藤色の瞳が見透かすかのように愁花を見つめた。 「…そうなのかもしれぬな。だが… それでは何故、妾たちは今この時空の硲に生まれ墜ちたのか…。」 一呼吸置いてから、儚い声色が微かに響いた。 「生を受け、宿命を背負い妾は生きておる。その宿命が何なのかもわからぬまま。人は闇雲に夜道を歩いているにすぎん。 …その最果てには、何が待ち受けておるのだろうか…。」 真っ直ぐに向けられる瞳には吸い込まれそうなほど強い光が宿っている。 けれど哀愁と孤独、悲哀の鈍い光もまた、彼女の瞳に見え隠れしていた。 _
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