第六章:もう一人の自分

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那由多が地面に転がる頃には、既に彼方は那由多の目の前にいた 「なっちゃんは何でそんなことを言うのかな?私はなっちゃんの為にあの二人を殺して上げたのになっちゃんはこんなとこに逃げるし、やっとの思いで会いに来たに嫌いなんて言うし、あんまし勝手なこと言ってたら殺しちゃうよ?」 既に彼方は正気ではないことが分かった このまま彼方からに逃げ続ければ幻想郷に被害が及ぶのは火を見るよりも明らかだ 今この場で殺すしかない。だが、那由多には出来なかった 彼方との実力は雲泥の差がある それでも那由多はゆっくりと立ち上がった 『男子!早く逃げろ!!』 那由多には戦意がない そう、山犬は思ったのだろう 山犬は那由多を逃がすために彼方を噛み殺そうと襲った だが、噛みつく寸前で山犬の体は糸で止められた 『くっ!小癪な!!』 「・・・?私はなにもしてないよ?」 山犬に問われた彼方は首をかしげ否定した 『なっ!男子、どう言うつもりだ?』 「ごめんね山犬さん。痛いかもしれないけど死ぬよりはましだから」 そう言って那由多は指をツイ、と降ろし糸を弾いた 『ぬお!』 その影響なのか山犬は森の奥深くへと吹き飛んだ 「・・・・・・彼方」 「なに?なっちゃん」 嬉しそうに笑いながら彼方は那由多の顔を除き込んだ 「正直に言うよ。・・・・・・僕は彼方が大好きだよ」 「私もだよ」 「彼方は間違った方へ進んじゃった。その間違いを正すのは僕しかいないと思う」 「・・・・・・」 「でも、今の僕じゃ出来ない。・・・・・・だから、2年待って」 彼方との実力の差は那由多も自覚している だからこそ、賭けに出た 「・・・・・・どうしよっかなぁ」 僅かだが手応えはある 何か彼方を引き寄せるものは・・・・・・ 「やっぱりだ・・・」 「2年後、僕が彼方を正せなかったら僕は彼方の物になるよ」 こんなことを言っても意味はないだろう 2年も待たなくとも今すぐに出来ることだ 「・・・分かった」 「本当?」 「無理矢理連れていくよりもなっちゃんが自分の意思で私の物になってくれた方が良いもんね」 彼方は余裕の笑みを見せ、那由多に背を向けた 「じゃ、2年後にまたね」 彼方は別れを告げ、ゆっくりと那由多から離れていった
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