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ドチャ
「うきゅ~」
鈍い音を発てて地面に落ちた
蜘蛛を背負っていたため、かなりの重量が那由多に掛かり、声を洩らしてしまった
「ここは?」
今だ起きる気配の無い蜘蛛を隣に寝かせ、那由多は辺りを見回す
そこは中庭だと言うことは分かった
それも純和風の物だ
「ここは私の家よ」
那由多の前にスキマが生じ、紫が出てきた
「気に入って貰えたかしら?」
「・・・僕をどうするつもりなの?」
見た限り紫には敵意が無いが、警戒するに越したことはないと考え、那由多は少し低い声色で話し掛けた
「んー。取り敢えずはそこの女郎蜘蛛の手当てでもしようかしら?藍ー!!」
「はっはい!直ぐに参ります!!」
家の奥から返事があり、狐の尻尾を九本生やした金髪の女性が慌ただしく出てきた
「御呼びですか?」
「そこで寝ている女郎蜘蛛の手当てをして上げてちょうだい」
「承知しました」
藍が胸の前に両袖を合わして那由多に近づいて来る
「子供、お前の名前は?」
「・・・土宮 那由多」
「そうか。私は八雲 藍だ」
「ついでに、私は八雲 紫よ~ん」
ふざけ半分で邪魔をして来た紫だが、藍が睨むと家の中に入っていった
「・・・同じ名字」
「ん?あぁ、私は紫様の式神なんだ。それよりも、そこをちょっと退いてくれないか?傷の手当てをしたいんだ」
「・・・」
藍がいい人だと言う事は那由多にも分かる
だが、本当に信じて良いのか分からず悩んでしまう
そんな那由多を見て、藍は頭を撫でた
「信じきれない事は分かる。だから私が変な事をすれば殺しても構わない」
そう言った後、藍は笑った
その表情が母の面影と重なり、那由多は藍を信じる事にした
「・・・約束だからね」
「ん、済まないな」
横にずれた那由多に礼を言い、藍は蜘蛛の手当てに掛かる
「蜘蛛さん、死なない?」
「暫くは目を醒まさないが、命に別状は無い」
「良かった」
「那由多、運ぶのを手伝ってくれないか?」
「分かった」
那由多は藍と共に蜘蛛を家の中に運び、布団に寝かせた
「女郎蜘蛛の事が心配だろうが、済まないが付いて来てくれ」
「・・・うん」
蜘蛛の事がとても心配だったが、藍の背中を追い、那由多は部屋を出た
少年九尾移動中・・・
「ここだ。入ってくれ」
藍が襖を開け、那由多を促した
どうやら居間のようだ
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