序章:神隠し

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「それじゃまた明日ね」 友人に手を振り、自宅へと直行する 「家に着いたら何しよう」 昨日までは本を読んでいたが、それも読み終わり特にする事が無い 「・・・蜘蛛の巣かな?」 ふと、前を見ると白い糸が張られていた その大きさは尋常では無く、そこらの民家よりも大きいかも知れない 「でっかい蜘蛛だ」 視線を巣の中心に向けると、那由多を一飲みできそうなほどの蜘蛛が寝ていた 「起こしちゃ悪いよね」 蜘蛛を気遣い糸を避け、何事も無かったように帰宅した 那由多がこの事に何も動じない訳は、今よりも幼い頃から見てきていたためだ しかし、那由多が見ている者は俗に言う妖怪や幽霊であり、常人には見えない その為、両親が居ない那由多は気味悪がれ親戚の間を転々としていた 「ただいま~」 家の中に入るが返事は無い 伯父もその家族も居るのだか、他の親戚と同様に気味悪がれているのだ それでも追い出されていないのは幸いだ 何時ものように急ぎ足で階段を登り、自分の部屋に入る 「・・・仕方無いよね」 血は繋がっていなくとも那由多は伯父家族の一人になりたいと心の底から願ってはいる だが、所詮余所者である自分がなれる筈も無い もう悟ってしまっているのだ 「もう寝よっかな」 晩御飯まで時間はまだある 特にやることも無く、ベットに潜り込み瞼を閉じる
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