第四章:永遠亭の姫と薬剤師と兎

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少女の部屋は現在の位置と真逆だったらしい。部屋に向かう間に自己紹介を済ませた 少女の名前は蓬莱山 輝夜。この永遠亭の主人だ 「ここが私の部屋よ」 話している間に着いた様だ。輝夜は襖を開け、那由多を招き入れる 「・・・」 那由多は輝夜の部屋を見て、絶句した 部屋の中があり得ないぐらい・・・・・・汚ない 布団は敷いたまま、机の上は食べた後の食器が積み重なれている 「・・・この皿、カビが生えてる」 「あぁ、それ、だいたい五ヶ月前のものね」 平然としている輝夜を見て、那由多の口元がひきつった 「それじゃ何して遊ぶ?」 「・・・その前に掃除」 「えぇ~」 本当に残念そうにしている輝夜を見て妥協してしまいそうになるが、ある案を那由多は思いついた 「ボソッ」 「へ?」 「もったいないなぁ。綺麗な所に居れば、輝夜はもっと綺麗になると思うんだけどなぁ」 「・・・」 那由多の言葉を聞いて、輝夜の心が揺らいでいるのが見てとれる 「そんな輝夜を見たら他の世界の男の人でも放っとかないよねぇ」 「那由多、掃除するわよ!」 俄然とやる気を出した輝夜は袖を捲り、掃除に取りかかった。輝夜と同様に袖を捲って、那由多も掃除し始めた ───────────────輝夜の部屋前 「あのグータラ姫にやる気を出させるなんて」 せっせと掃除をしている二人を襖の隙間から永林が感嘆しながら見ていた 「今回は見逃してあげようかしら」 本当は部屋から逃げ出した那由多を探して、罰の代わりに新薬の実験体にしようと思っていたのだ 「それにしてもあの子・・・・・・以外に腹黒いわね」 ─────────────── 「やっと終わった」 「疲れたわ」 二人が掃除し始めて七時間が経っていた 「結構汗かいたね」 「それじゃ風呂にでも入ろっか」 「ん~、でも僕着替え持ってないよ」 元々那由多は永林を連れてすぐに帰るつもりだったのだから当然の事だった 「気にしない気にしない」 輝夜に背を押され、無理矢理連れていかれた 「さ、早く服を脱いで」 「・・・・・・」 その言葉を聞いて那由多の思考は停止した 「一緒に入るの?」 「ふーん、恥ずかしいんだ」 輝夜は意地悪そうな笑みを浮かべた 「・・・後から入る」 「駄目、一緒に入るのよ」 楽しそうに言いながら、輝夜は那由多の腕を掴み、無理矢理風呂に入れた
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