序章:神隠し

3/4
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
何か物音がし目が覚めた 取り敢えず時計を見てみると11時だった 「・・・晩御飯食べ損ねた」 軽く落ち込んでいるとまた物音がした どうやら外のようだ 「あれって、昼に会った蜘蛛さん?」 那由多の言う通りあの時に寝ていた蜘蛛がいた 何かを探しているのか辺りを見回している 「あっ」 目があった 蜘蛛は那由多を凝視している その時、頭の中で女性の様な声が響いた 『お前の名は?』 慌てて部屋の中を見るが那由多一人しかいない 取り敢えずもう一度蜘蛛に向かい呟いた 「土宮 那由多」 呟いた途端、蜘蛛は口から糸を吐き出し、窓の前まで近付いてきた 『お前が那由多か』 「蜘蛛さんは僕を知っているの?」 『那由多が赤子の時から知っている』 それを聞いて那由多は少し嬉しくなった 何しろ今までは住む場所を転々として来たため、自分を古くから知っている者が居無かったからだ 調子に乗ってどんどん質問してしまった その数々の質問に対して蜘蛛は嫌な顔せず淡々と答えてくれた 話している間にある不安が浮かび恐る恐る質問してみる 「・・・蜘蛛さんが来たのは僕を食べるため?」 『違う』 その答えを聞いて安堵の息を漏らす その間に蜘蛛が話し掛けてきた 『私は那由多の母との約束を果たしに来ただけだ』 「約束?」 『那由多は今の生活は辛いか?』 痛い所を突かれた 正直に言えば、かなり辛い 異形の者が見えるため、家では親戚には気味悪がれ、学校では虐めの対象にされた まだ子供の那由多には辛すぎる事だ 「・・・正直、すっごく辛いよ。何度か死にたいって思ったこともあるよ」 『・・・』 蜘蛛は口を挟まず、那由多の悲痛に耳を傾けた 「でもね、お父さんとお母さんと約束したんだ どんなに辛くても、頑張って生きなさいって そしたらいつかは幸せな時が来るからって ・・・・・・約束したんだ」 那由多の思いを聞き、那由多の両親との約束を聞いて蜘蛛はある提案を言ってきた 『それならば私と来るか?』 「で、でも蜘蛛さんに迷惑掛けちゃうよ?」 『構わない。それに、これが那由多の母との約束でもある』 「えっ?」 『那由多が辛い思いをしていたなら、私に引き取って欲しい。それが那由多の母との約束だ』 「・・・」 『どうする?』
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!