第五章:心の闇

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「あ、永林さん。ここで降ろして」 迷いの竹林を通過した所で那由多は降ろすように永林に頼んだ 「いいの?迷ひ家(八雲家)にはまだ遠いわよ」 「せっかくだから歩いていきたいんだ」 那由多の意見を聞いて永林は渋々承諾した 「分かったわ。その代わり、傷一つしないのよ」 「はーい」 遠ざかって行く永林に手を振り、笑顔で八雲家を目指した 「幻想郷って本当に良い所だなー。蜘蛛さんの言ってた通りだね」 那由多が描いていたのは妖怪と人間が共存し供に協力し合っている世界 見た所では幻想郷が一番だ そう、『今まで見た』幻想郷は 「・・・え」 刹那、那由多の天地が逆転した 「くそっ!この化け物が!!」 「ふぇ?」 吹っ飛んできたこの男に巻き添えを食らって那由多も吹っ飛んだらしい 「おじさん何してるの?」 「答えてる暇はねぇ!餓鬼はとっとと家に帰れ!」 「むー」 理不尽な答えを聞いてふてくされていると、木々を踏み潰しながら大きな山犬の妖怪が出てきた 「あれ?」 その妖怪に那由多は見覚えがあった 大きさは違うが、確かに迷いの竹林で見た妖怪の死体だ 「ちっ、もう追ってきやがった」 「おじさん何したの?」 「何にもしてねぇよ!いきなり襲ってきやがったんだ!」 『貴様は三日前に私の子を殺したであろうが!』 頭の中に山犬の声が響いた あの時に見た死体は山犬の子供だったようだ 「それなら仕方ないっか。じゃぁね、おじさん」 一人納得した那由多は何もなかったように足を再び目的地に向ける 「なんだってんだよ!?俺は化け物を殺した英雄になったのによ!」 その言葉を聞いて那由多は足を返し、男に近づいた 「ねぇ、おじさん。なんで妖怪を殺しただけで英雄になったの?」 「んなもん、妖怪がわりぃからに決まってんだろ!?」 「全部?」 「そうだ!」 那由多は目を細めた 冷酷で残酷な殺気を放ちながら 「分かったらとっと・・・と?」 那由多を追い払おうとした男の胸に黒い棒が貫いている 那由多は人喰らいを男の胸から抜き取った それと同時に男は音を発てて倒れた 『良いのか?』 「気にしなくても良いよ。じゃね」 那由多は笑いながら目的地とは違う方向へ走り去った 『・・・・・・・・・放っといても良いのだろうか』 山犬は那由多を心配した 走り去る時の那由多の顔は、蒼白く、今にも死にそうな顔をしていた
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