第六章:もう一人の自分

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「椛と同じ戦法では無意味ですよ」 「べ~。やってみなきゃ分かんないよーだ」 「言い忘れていましたが・・・」 喋っている途中で那由多の視界から文が消えた 「幻想郷最速なんですよ。私は」 文が喋り終わると同時に那由多は振り向きながら妖喰らいを振った 「意味がありませんよ」 次に文の声が聞こえたのは元の位置からだった 「だったらやり方を変えるだけだもん」 那由多はふてくされながら妖喰らいを鞘に納め、腰に巻き付けてあるポーチから母の形見を取り出した 「凶つ手(マガツテ)の使い方難しいから加減できないからね」 「何の事か分かりませんが、貴方の速度では私を捕らえることは出来ません」 誇らしげに語った文だが、那由多は凶つ手を付けた両手を振り回して全く文の話を聞いていなかった 「・・・人の話は・・・ちゃんときけぇぇえぇぇ!!」 「それまで!!」 今にも那由多を引き裂きそうとしていた文だが大天狗がそれを止めた 「那由多、お主は文を殺すつもりか?」 「そんなつもりはないよ。酷いなぁ」 「大天狗様。話が見えないのですが?」 「そこに落ちとる石を那由多に投げてれば分かる」 文は言われた通りに手頃な石を拾い、殺意を込めて那由多に投げた 「・・・」 文は絶句した 文だけではなく、那由多と大天狗を除いだ他の者も文と同じ思いだろう 文の投げた石は那由多に当たる前に半分に分かれ、地面に落ちる頃には視認できなくなっていた 「これで分かったじゃろ。あのままにしておけばお主は死んでおった」 「大天狗さん見えてたの?」 「儂にはその様な細かい糸は見えん。ただ昔に同じようなものを見たことがあるだけじゃ」
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