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蜘蛛の誘いはまるで甘い毒の様に感じる
心の底では今すぐにでも行きたいと言いたがっているが、その誘いに乗ってはいけないと語り掛けている部分もある
暫くの間、葛藤し続けた
『・・・』
蜘蛛は黙り込み、那由多の邪魔をしないようにしている
葛藤し続けた結果、答えが出た
「・・・・・行く」
短い一言だが、那由多は力強く、蜘蛛の誘いに乗った
『・・・後で後悔するかもしれないぞ』
「大丈夫だよ」
『そうか。それならば直ぐに行くぞ』
「あっ、ちょっとだけ待って」
蜘蛛から離れ、押し入れの中から袋に入った長い棒状の物を二本と指先に金属が付いた黒い手袋を取り出した
「それじゃ行こ」
『・・・形見か』
「うん。手袋がお母さんので、こっちがお父さんの」
那由多は笑いながら言ったが、その瞳は悲しみを浮かべていた
『乗れ』
蜘蛛はそれ以上追求せず、背中に乗るよう促した
「よいしょっと。乗ったよ」
那由多が途中で落ちない様に糸で固定した後、蜘蛛は高く跳躍した
「うわっ!」
那由多は着地の衝撃に耐えられず思わず声を出してしまった
しかし、蜘蛛は構わず、また高く跳躍した
それを繰り返している間にどこかの山奥に着いた
「ここは?」
『結界の歪み。この奥に幻想郷がある』
「幻想郷?」
聞いたことが無い地名を聞き、蜘蛛に質問するが『行けば分かる』と言われた
目の前の光景には歪んでいる部分がある
那由多を乗せたまま蜘蛛は歪みの中へ入っていった
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