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「隙有り」
射程範囲に霊夢が入り人喰らいで切り裂こうとするが、奇妙な傘に受け止められた
「情けないわね霊夢」
背後から声が聴こえた
那由多は視線を後ろに向ける
そこには紫色のドレスを着た金髪の女性が居た
「紫(ユカリ)、どうしてあんたが居るわけ?」
「暇だったから遊びに来ただけよ」
どうやらその女性は紫と言うらしい
紫をよく見ると左手を奇妙なスキマの中に入れている
視線を戻し、傘の柄を見てみると紫の左手らしき物がスキマから握っている
「何で邪魔するの?」
「霊夢は私の知り合いなの。だから、僕がそこの女郎蜘蛛を助けた様に私も霊夢を助けたのよ」
そう言った後、紫は那由多に殺気を放った
紫が何かを仕出かす前に、那由多は霊夢の下を離れた
「酷いわね。そんなに怯えなくても良いじゃない」
紫が手を目元にやり、わざとらしく泣いていた
(二対一じゃ分が悪過ぎるよ。どうやって逃げよう)
既に那由多は戦う意思が無く、逃げる算段を考えていた
「ちょっと紫!!あんたが来るなら私が来た意味が無いじゃない!!」
「私は思ったままに生きてるだけよ」
紫の言葉に霊夢は頭に来たらしく、那由多の存在を忘れ紫と言い争っている
(今なら逃げれるかも)
霊夢が油断している間に、足音を立てぬようにして蜘蛛の傍まで移動する
何とか気付かれずに済み、蜘蛛を背負う
(あ・・・お父さんとお母さんの形見)
蜘蛛を背負った事で両手が塞がり、両親の形見を持っていく事が出来ない
ほんの少しだけ、どうするか考えたが、諦める事にした
(お父さん、お母さん、御免なさい。今は蜘蛛さんを助ける事の方が大切なんだ)
心の中で謝り、逃げるために足に力を入れる
(あれ?)
那由多は確かに地を蹴った筈なのだが、その感覚がしなかった
(えっ、これって・・・あの人のスキマ?)
那由多が足元を見て、見たのは、先程紫が手を入れていた奇妙なスキマだった
完全に落ちきる前に、那由多は視線を変えた
目に映ったのは、怒鳴っている霊夢の背中と、それをものともせずこちらを見て笑っている紫だった
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