花びらと泡の海

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右手に刃を左手には花束を 傷んだ心はキリキリと軋んで それでもあなたを愛しく想う   空気しか零れない役立たずの喉 得意なあの歌はもう歌えない どんなに泣いても 苦しくなるだけだよ ねぇ、もう終わりにしよう   悲劇的な運命だったとしても あなたに会えて よかったと笑うよ 花びらの海 沈む肢体は泡となる 最期でいいから あなたに抱いてほしかった   片方はわたしで片方はあなたで 傾く天秤はカタカタと揺れて どちらが愛しいかを知らせる   歩く度に悲鳴を上げる両足 わたしは人間に 成り切れなかった どんなに嘆いても戻れはしない ねぇ、もう終わりにしよう   愚かだと誰かに笑われても あなたに会えて よかったと言えるよ 花びらの海 沈む肢体は泡となる 最期でいいから あなたに抱いてほしかった   言葉で伝わる何かじゃなくて 目と目で感じる何かを信じた 綺麗なものばかりを求めすぎた 届くはずがなかったのに   右手に刃を左手には花束を 祈るようにはじまりへと還る 花びらの海 沈む肢体は泡となる 嘘でもいいから あなたに抱いてほしかった
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