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「あぁ…もう最悪」
ミスティーク学園の裏庭にあるベンチに腰掛け、優は深く溜息をついた。
進級試験は明日なのに、唯一成功した召喚術で呼び出し契約できたのが悪魔で、しかもそいつが失踪した戒斗兄さんにそっくりで…
-お前の貞操を俺に捧げろ-
「ぅがぁぁっそんなことできるかぁぁぁぁぁぁっ!!!」
優は頭を抱え、大きくのけ反り叫んだ。
「優?」
「!!み、美緒っ」
美緒は優の隣に腰掛けた。
そし暫くして、申し訳なさそうに切り出した。
「その…昨日はごめん。ちょっとデリカシーがなかった」
「へ?あ、いや…俺こそ…せっかく考えてくれたのにごめん…」
しばしの沈黙。
なんか…気まずい
と二人は思っていた。
そしてこの沈黙を破ったのは美緒だった。
「あの、さっき叫んでたけど…何かあったの?」
「うん……その、驚かないで聞いてほしい」
優は昨日起こったことの全てを美緒に話した。
ただし貞操の件は抜きで。
「そんな…悪魔と契約したなんて…」
「うん…本の表紙には精霊って書いてあったんだけどね」
優はあははと複雑な表情をして笑った。
「…でも、進級試験は何とかなるわ」
美緒はすくっと立ち上がり、優の前に立った。
「精霊の種類は何万とある。ミスティーク学園内にある精霊図鑑を集めてもざっと5千種類くらいにしかならないはず…優が精霊だと言い張ればそれで通るはずよ!」
美緒は自信ありげに胸を張った。
「そんなに上手くいくかな…」
「大丈夫よ!今この瞬間にも新しい精霊が見つかってるんだから!ただ問題が一つだけあるのよ…」
美緒は難しい顔をした。
「悪魔が上手く契約者に従うか…精霊は契約者に従順だけど、悪魔は見返が必要なの…」
はいそうですその通りです。
現に貞操をよこせとか無謀な条件を突き付けられました。
優は泣きそうになった。
「そ、その件に関しては上手くやるよ…」
「そう、頑張って優!それさえ上手くいけば成功するわっ大丈夫何かあれば私が何とかするから!!」
美緒は優の手を取り満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう美緒…俺…頑張るよ」
いつの間にか優の瞳から涙が溢れていた。
ただし、これはけして嬉し泣きなどではない。
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