第2章 進級試験

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深夜の部屋は静かで、暗い。 まるで深い闇の中にいるような感覚になる。 「眠れない」 羊を数えること9999匹…そして今、記念すべき10000匹目を迎え優は眼をあけた。 身体は重いのに、眼と頭は睡眠を取ろうとしない。寧ろ気持ち良いくらい冴えている。 まずい何とかして眠らないと… 優は天井を見つめながら溜息をついた。 「眠れないようだな」 暗がりから聞こえた声に驚き上半身を起こすと、いつの間にかカイトが優の傍に座っていた。 「お、脅かすなよ…別に、ちょっと考え事だ」 「ほう、羊を数える事が考え事なのか。」 「う☆って何で俺が羊を数えてたの知ってんだよ」 「絆だ」 「へ?なにそれ…」 「絆は契約者と俺との間にあり、俺は絆を通して契約者の意識…つまり心を読み取ることができる。まあ精霊に絆はないがな。」 「へぇーそうなんだ…」 って俺にプライバシーはないわけ?!個人情報漏洩しまくってんじゃん!! 優は心の中で叫んだ。 「くくっ安心しろ…お前の心の奥底はあまり読まないようにしてやる。」 「そりゃどーも。」 その言い方だと結局のところ、心を読むのとかわらねー… 「それより、お前ももう寝ろ。いくら悪魔でも、夜更かしは身体に悪いぞ!」 優はふてくされながら、ソファに倒れる。 「悪魔は眠らない」 「眠らないって…じゃあ昨日の夜何やってたんだ?」 「ユウの寝顔観察。」 「なっ!!」 優が起き上がろうとすると、カイトの手がそれを制する。 「な、何するんだよ」 カイトは優の髪をそっと撫でる。 「もう寝ろ。人間の身体は脆い…ユウ、瞳を閉じて…」 カイトの声が優しく響く。 「ん…」 今までに感じたことのない、心地よい睡魔が優を包む。 「お前は他の人間とは違う」 「また…なんだよ…それ」 意識は薄れ、霞む視界に見えるのは優しい眼をしたカイトの姿。 「おやすみ、ユウ」 優の胸に響くのは心地よいカイトの優しい声。 抗う事のできない睡魔に呑まれ、優は眠りについた。
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