第2章 進級試験

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青い空、白い雲、爽やかな風。 そして、人生最大の分岐点に佇む俺。 現在、俺は進級試験の順番を待っている。 俺まであと5人… 早々と合格した美緒は、後ろの方から俺に向かって「頑張れ」とジェスチャーを送っている。 「はい杉谷君、合格。次」 担任兼試験官の土御門律(ツチミカドリツ)が次の生徒を呼ぶ。 まずい…カイトのおかげでぐっすり眠れて朝早く起きれたけど、あいつからの条件を呑む決心がつかないまま、この時を迎えてしまった…くそ~ 優が後悔している間に、他の生徒達は次々に合格し、あっという間に優の順番がまわってきた。 「次、綾杉君。」 「はい!」 後ろの様子をちらりと伺うと、美緒が相変わらずジェスチャーを送っているが、先程より力が入っているようにも見える。 「綾杉君どうかしましたか?」 「いえ…何でもないです…」 なかなか始まらない召喚に、他の生徒達がざわめき出す。 「大丈夫か?」 「まさか綾杉君、召喚できないんじゃ…」 「うそーじゃぁ留年になっちゃうの?」 ざわめきが次第に大きくなる。 あーもーそんな事はわかってるんだよ!! 「綾杉君?」 くそっ…もうやけくそだ!! 「綾す…」 「お前の条件呑んでやらぁぁぁぁぁぁっ!!」 優の叫びが試験会場にこだまする。 (承知…お前の望み叶えてやろう) 優の叫びに呼応するかのように、黒い煙りが試験会場に集まる。 そして、一箇所に集まり徐々に人の形をなしてゆく。 「な、な、な…」 優は眼を疑った。 黒い煙りから出てきたのは、今朝まで見ていたカイトではなかったからだ。 そこには、劣情を誘う瞳と桜色の唇が印象的で妖艶な顔立ちに、艶やかな黒髪をなびかせ、女性用のビキニのようなきわどい服装に身を包み、豊満な胸を強調するようなポーズをとっている小悪魔美女が立っていた。 「ご主人さま。お・ま・た・せ」 カイトらしいそれは、かわいらしくウィンクを投げた。 と同時に、試験会場に男子生徒達の歓声が沸き上がる。 「お…まえ…」 優はわなわなと震える。 頭の中はパニック状態。 「綾杉君…」 「はひっ」 土御門の呼びかけに驚き、優の声は裏返ってしまう。 「放課後、談話室に来なさい。合否はその時に付けます。」 「…は…い…」 「以上授業おわり!」 土御門が言い終えたのと同時に、授業の終了を告げるベルが鳴り、生徒たちが次々に試験会場を出ていく。
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