第2章 進級試験

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「ありえないっ」 優の声が、誰もいない廊下に響く。 「何が不満なんだ?」 「不満も何も、お前のその格好だ!」 隣にいるカイトは、今だ小悪魔美女のままだった。 「他になかったわけ?もっとこう精霊らしいやつ…」 「精霊として振る舞うとは言ったが、精霊の姿になるとは言ってない。ま、あんな下等生物の姿になるなんて御免だがな。」 「ぐっ…そ、それでもその格好はないだろ!」 「あぁこれは、昔知り合いのサキュバスに1000人位の人間を従えた奴がいてな…そいつの姿に似せれば人間を欺けると思って。俗に言うお色気作戦だ。」 「あ…そ…」 その作戦はうちの担任には通用しないだろうな…留年、覚悟しとこう… 優は、大きな溜息をついた。 しばらく無言のまま歩いていると、談話室と書かれたプレートが見えてきた。 うぅ…怖い… 優は談話室のドアの前に立ち、ドアをノックしようとするが、中に入るのが怖くて躊躇してしまった。 「ユウ、大丈夫。悪い事にはならない…」 カイトが優しく声をかけ、そっと頭を撫でる。 「カイト…」 「もし奴がお前の道を塞ぐようなら、俺がその場で奴を消す。」 …それ、一番悪い事ね。 「ありがと…」 あまりうれしい発言ではないが、カイトなりに気を使ってくれたのだろうと思い、優はカイトに苦笑いを含め礼を言う。 「俺はお前に呼ばれるまで部屋の中では姿を消すが、お前の傍にいる。なにかあったら俺を呼べ。」 優はこくりと頷く。 そして、ドアを2回ノックしドアを開く。
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