第3章 夢

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「愚か者が…天空より制裁をくれてやる…」 先程まで雲一つなかった青空に黒い雲が突如現れ、空を覆い尽くし渦を巻く。 「え、なに?」 「やだ怖い…」 生徒達が不安そうにざわめき出す。 まずい! 「カイト!止めろっ!」 「砕け散れ。」 カイトの言葉と同時に、空にできた黒い渦から現れた凄まじい雷撃が土御門を直撃し、その衝撃で砂埃が舞い上がる。 「先生!!」 優が土御門の元に近づこうとすると、カイトが無言で制する。 暫くすると、舞い上がった砂埃が徐々に消えてゆく。 「!」 優は眼の前に広がる光景に、絶句する。 神々しいまでに輝く巨大な鳥が、美しい朱色の羽を土御門を護るように広げていた。 「ご苦労、朱雀。」 朱雀と呼ばれる巨大な鳥は、土御門の言葉に頷き、強い光を放ち一瞬で姿を消す。 「無駄だと解ったか?」 「ふん、手加減してやったんだ。そんな事も気付かないのか。」 そして再び睨み合う。 「せ、先生!」 美緒が慌てた様子で、土御門に走り寄る。 「先生、今のはいったい…」 土御門は一瞬でいつも通りのにこやかな表情にもどる。 「綾杉君の精霊が少し張り切ってしまいましてねぇ魔法が当たってしまいましたよ。いやしかし、今のはかなり強力な上級魔法でしたね、素晴らしい!」 「そう…なんですか?」 「そうです。皆さんも頑張って練習すれば、綾杉君のように強力な上級魔法を精霊に使わせる事ができます!」 「そうなんだ!」 「綾杉君凄い!」 生徒達のから、大きな拍手が沸き上がる。 何で皆こんなに簡単に騙されるの!? 優は土御門の様子をちらりと伺うと、片方の口角を上げうっすらと不気味な笑みを浮かべていた。 そして何故、この顔に気付かないんだ… 「はい、では授業に戻ってください。」 生徒達は土御門の言葉に従い、先ほどよりも気合いを入れて授業を再開する。
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