第3章 夢

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「ん…此処は…」 優はぼんやりとする頭で、周囲を確認する。 本棚に綺麗に並べられた沢山の絵本、部屋の隅に置かれた玩具箱、青空に雲の絵が描かれた壁紙…どれも見覚えのあるものばかり。 「俺の…部屋?」 俺が小さい時に使っていた部屋…ってことは、これは夢か。 優は近くにあった本棚に近づき、並べられた絵本を手にとるりページをめくる。 わぁ懐かしい!これも、これも…これもっ!よく兄さんに読んでもらったっけ… 優は瞳を閉じ、絵本を読む優しい兄の姿を思い出す。 -プルルルルッ 「!」 静寂を引き裂く電子音。 優の心臓が大きく跳ねる。 「び、びっくりした…」 プルルルルップルルルルッ 電子音は規則正しく鳴り続ける。 「優くーん、おねがーい!」 聞き覚えのある声が、ドアの外から聞こえる。 この声は…母さん! 優は勢いよくドアを開ける。 「はーい!」 優の前を、小さな男の子が電子音の発生源に駆け寄る。 え?俺…小さい時の…あれは電話… 「っまさか!」 優は弾かれたように、小さな優を追いかける。 ダメだ- 小さな優が受話器に手をかける。 その電話に出ないで!- ガチャッ 「はい綾杉です。」 「!」 「かんださん?うん、いるよー」 小さな優は受話器を電話の隣に置き、立ち尽くす優の隣を元気に走り抜けた。 かんだ…やっぱり、あの日だ…でも、どうして今更… 「優、母さんの所に行ってなさい…」 戒斗は抱いていた優を降ろし、電話に向かう。 兄さん!…あぁ覚えてる、この時の兄さんの顔、酷く冷たかったから… 「…わかった。」 戒斗は受話器を置き、足速に部屋へ戻る。 そんな戒斗の後を、小さな優は様子を伺いながら付いていく。 「兄ちゃん?今日お休みだよ?」 「急に仕事が入ってね…」 戒斗は振り向かずに応え、ガーディアンの制服である白いコートを羽織り玄関へ向かう。 「あら、戒君お仕事?」 母は柔らかな髪を揺らし、小走りで玄関に向かう戒斗に駆け寄る。 「あぁ、急にね…」 「お休みなのに大変ねぇ…無理しちゃダメよ?」 母はやんわりと微笑む。
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