67人が本棚に入れています
本棚に追加
「ん…此処は…」
優はぼんやりとする頭で、周囲を確認する。
本棚に綺麗に並べられた沢山の絵本、部屋の隅に置かれた玩具箱、青空に雲の絵が描かれた壁紙…どれも見覚えのあるものばかり。
「俺の…部屋?」
俺が小さい時に使っていた部屋…ってことは、これは夢か。
優は近くにあった本棚に近づき、並べられた絵本を手にとるりページをめくる。
わぁ懐かしい!これも、これも…これもっ!よく兄さんに読んでもらったっけ…
優は瞳を閉じ、絵本を読む優しい兄の姿を思い出す。
-プルルルルッ
「!」
静寂を引き裂く電子音。
優の心臓が大きく跳ねる。
「び、びっくりした…」
プルルルルップルルルルッ
電子音は規則正しく鳴り続ける。
「優くーん、おねがーい!」
聞き覚えのある声が、ドアの外から聞こえる。
この声は…母さん!
優は勢いよくドアを開ける。
「はーい!」
優の前を、小さな男の子が電子音の発生源に駆け寄る。
え?俺…小さい時の…あれは電話…
「っまさか!」
優は弾かれたように、小さな優を追いかける。
ダメだ-
小さな優が受話器に手をかける。
その電話に出ないで!-
ガチャッ
「はい綾杉です。」
「!」
「かんださん?うん、いるよー」
小さな優は受話器を電話の隣に置き、立ち尽くす優の隣を元気に走り抜けた。
かんだ…やっぱり、あの日だ…でも、どうして今更…
「優、母さんの所に行ってなさい…」
戒斗は抱いていた優を降ろし、電話に向かう。
兄さん!…あぁ覚えてる、この時の兄さんの顔、酷く冷たかったから…
「…わかった。」
戒斗は受話器を置き、足速に部屋へ戻る。
そんな戒斗の後を、小さな優は様子を伺いながら付いていく。
「兄ちゃん?今日お休みだよ?」
「急に仕事が入ってね…」
戒斗は振り向かずに応え、ガーディアンの制服である白いコートを羽織り玄関へ向かう。
「あら、戒君お仕事?」
母は柔らかな髪を揺らし、小走りで玄関に向かう戒斗に駆け寄る。
「あぁ、急にね…」
「お休みなのに大変ねぇ…無理しちゃダメよ?」
母はやんわりと微笑む。
最初のコメントを投稿しよう!