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「なんだ、泣いているのか?」
「!」
優が顔を上げると、白いコートをはおった人影が立っていた。
だが、月明かりを背にしている為、顔が陰っていてよく見えない。
「泣いてないもん!」
後ろを振り返ると小さな優が、裸足で立っていた。
此処は…兄さんが失踪した現場の自然公園。確か、兄さんが家を出てから3日後の夜、ガーディアンの上司から家に電話があった。
内容は、兄さんが隊に姿を見せない事を不審に思い、仲間が家の周辺を探していたら、自然公園内で兄さんのものと判定された大量の血痕と、「かんだ」という人の死体が見つかったとゆう事…。
それを聞いた俺は、両親の制止を振り切り自然公園に向かって走った…靴も履かずに。
「強がるなよ、ほら涙の跡が残ってる。」
大きな手が、優の頬を撫でる。
「ん…」
この人、誰だっけ…姿も声もはっきりと思い出せない。
「お前を現場に連れて行ってやりたいが、どうも…」
人影は、言葉を切ると後ろを振り返る。
「?」
「…黙ってろよ。」
「大佐!こんな所におられましたか…」
大柄な男が、息を切らせて走ってくる。
大佐…確か、そんな名前だったような…
「何だ、証拠の回収は終わったのか?」
大佐と呼ばれる人影は、少し不機嫌そうに問いかけた。
「いえ…その元帥(ゲンスイ)殿がお呼びです。」
「チッ、じじぃが現場で何しようってんだ、面倒くせぇ。」
「大佐!そのような発言は控えてください…おや?その子は?」
大柄な男が近づこうとするが、大佐がそれを阻止するかのように前に立つ。
「迷子だ。お前は先に行ってろ。俺はこの子を送ってから行く。」
「…解りました。なるべく早く来てくださいよ!」
男は不思議そうな顔をしたが、大佐の指示に従い、小走りで来た道を帰って行った。
「厄介なことになってきたな…まぁいい、お前はもう帰れ。此処は危険だ。」
「でもっ」
「…はぁ。」
大佐は深い溜め息をつき、小さな優の頭を優しく撫でる。
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