はじまり

2/3
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
 私の名前は篠原千尋。21歳の大学生。大学に通いながらボランティアでカトリック系の病院でヘルパーをしている。 ヘルパーといっても身体的介護を主として働いているような仕事ではない。もちろん場合によっては行うが、この病院でのヘルパーは違う。7階建の1~6階はそうした介護重視のヘルパーがいるのだが、私の働いている7階は特殊な病棟なのだ。 7階というのは簡単に言えばただ死を待つだけの人たちが入る病棟なのだ。表向きは緩和ケア・・・。つまり、痛みや苦しみを緩和し、徐々に病気を治していこうと・・・。 本当のところはもう助かる見込みのない人たち、治療費のことで家族などから見捨てられた人たち、今後の治療を拒否した人たちが最後の時を過ごす病棟。つまり7Fに入院したらもう退院はおろか家に帰ることは出来ないのだ。私はそんな7階で働いている。 このヘルパーの仕事はお姉ちゃんである姫子から紹介された。自宅近くに教会があり、子供のころから教会に通いつづけていた私ならこの病院で働けると太鼓判を押してくれた。それでとんとん拍子に話が進み、今に至るというわけだ。 そんな私はというと…。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!