銃声の子守歌~Bang lullaby~

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銃声の子守歌~Bang lullaby~

 戦争とは、詰まる話し、政治的なパワーゲームの一形態に過ぎない。戦況を読み、自らの手腕で駒を動かし、そして勝利する。上に立つ者にとってそれは、まさに自らに被害が及ぶ事の無い安全な“ゲーム”であった。  しかし、その“駒”にしてみれば、戦争とは現実であり決してゲームなどでは無い。日々の一戦一戦が、常に生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。そんな人間は腐る程いる。  かく言う“私”もその一人だ。戦争の駒に過ぎない。チェスに例えるならまさに歩兵(ポーン)。それも、成り上がり(プロモーション)が困難な両端の呪われたポーン(ルーク・ポーン)だ。今も昔もこれからも、死ぬまでその立場は変わらないだろう。何故なら、盤上の“駒”がそれを操る“主人(プレイヤー)”に成って替わる事など、絶対に有り得ないのだから。  話しは逸れたが、私が所属するGA社の歩兵大隊は現在、この地<ホワイトアフリカ>に存在する旧ゲルダ要塞の近郊に駐屯している。駐屯の理由はただ一つ、パックスに対抗する組織として最大規模を誇る反体制組織『マグリブ解放戦線』の鎮圧と無力化にある。この旧ゲルダ要塞はマグリブ解放戦線の重要拠点の一つだ。こちらがこの要塞を陥落させる事に成功した場合、マグリブ解放戦線はその護りの要を失う事になる。後は基本的な物量で勝るパックスの勝利は一気に近付くだろう。  そうなれば、私達歩兵もお役御免だ。ようやく自分のコロニーに帰る事が出来る。今思えばもう四年も家に帰ってない。別に何も無いのに、何故だか今は家が恋しく感じる…… ――リー・エンフィールドの手紙より―― 
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