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僕は図書室の窓際の一番後ろ、日当たりのいい席で読書をしていた。
「隣、いい?」
僕の隣から声を掛けてきた、少し幼さの残る女子生徒。
「どうぞ」
彼女から目を離しぶっきらぼうに答える僕に、彼女は ありがとう と微笑んだ。
僕の頭の中で彼女の声が木霊した。
時間というものはあっという間に過ぎ去っていく。
僕はかなり熱中していたらしい。
辺りは朱色に染まり、時計の短針も六を過ぎていた。
「凄い集中してたね」
いきなり話し掛けられ、少し肩が跳ねた。
「いつものことだよ」
「本当に?」
「嘘ついてどうすんのさ」
「冗談。言ってみただけよ」
夕焼けの中、静かに笑った彼女は凄く綺麗だった。
初めての会話は何の変哲のない内容で、変わっていると言えば、僕らは初対面だと言うのにひどく馴れ馴れしかった。
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