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彼女とはここ数日会っていない。
いや、会いに行こうと思えばいけないこともないが、大した用事もないのに行くこともないだろう。
それに、名前さえも聞いてないのだから。
取り敢えず、今日も僕は図書室へ通う。
何故 と言われても、好きだから仕方がない。
それが僕の日課なのだから。
今日は何を読もうか。
そんなことを考えていた。
ふと目に止まった本に手を伸ばしてみる。
「不思議の国のアリス…?」
本を終う場所を間違っている。
“元にあった場所に戻す”
そんな初歩的な事も出来ない奴に、本がちゃんと読めているのかと思うことが度々ある。
しょうがない、帰るときにカウンターに出しておこう。
そう思い、本を適当に選び席に着く。
限られた短い時間の中で、僕には一分一秒がとても貴重だった。
「あれ、意外な人に先を越されたな」
聞き覚えのある声。
そこには彼女が立っていた。
「それ読む?」
本を指して僕に問い掛けた。
僕は指された本を手に取り、彼女へと差し出す。
「いいよ、僕は読まないから」
「ふふ、読まないのに持ってたの?面白いね」
彼女はそう笑いながらも本を受け取り、僕の隣へと腰掛けた。
こんな事を言ってはなんだが、彼女からは良い香りがする。
これは以前会った時も思った事だった。
決してしつこくない、邪魔にならない良い香り。とても彼女に合っていると思った。
それにしても、この本をあそこの棚に入れたのは彼女だろうか。
もしそうならば、一言注意しなくてはならない。
「その本を終ったのは君か?」
「えぇ、そうよ」
「終う場所を間違えている。それは童話だろ?だったら童話の所へ終うべきだ」
「…偉いのね。分かった、ちゃんと戻しとく」
言い方が少し冷たっただろうか。そんなことを思い、本の内容が頭に入ってこない。
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