1人が本棚に入れています
本棚に追加
季節は冬。時期は十二月。
地元の駅や、周りの民家。様々な場所が光のドレスを身にまとい、今まで気にも留めなかった場所たちが、ここぞとばかりに自分をアピールし始めるこの季節。
僕は何時もどおりの時間に起きて、食パン二枚とコーヒー一杯を胃に収め、震える体に鞭を打ち、玄関の扉を開けた。
一歩外に出た瞬間、まってましたと言わんばかりに襲い掛かる冷たい風。
紺色のダッフルコートを着ている僕の体に、躊躇なく吹き付ける風達は、僕の体に触れてはスッと離れていくのを繰り返す。
どうにもこの季節は好きになれない。
顔、真っ赤になっていないかな?
かじかむ両手で、そっと顔に触れてみる。
顔、暖かいな。これは赤くなっているに違いない。
小さく吐いたため息が、モクモクと雲のように宙に舞い、静かに消えていくのを横目で見ながら、僕はバス停へと向かって歩いていった。
時刻は午前九時。
この時間帯は、あまり人が並んでいないのが、唯一の救いだった。
だって、あんまりにも人がいたら、僕が座れないだろ?
通学の乗車時間は、多忙な学生にとっては貴重な睡眠時間になる。
それを立ってすごせというのは、あまりにも酷い話じゃないか。
一度熟睡しすぎて、降りるはずのバス停を二つも過ぎてしまったのは、ここだけの秘密にしておこう。
最初のコメントを投稿しよう!