繋いだ手

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白いファーのミニコートに紫チェックのプリーツスカート。ブーツは買ったばかりのニーハイブーツ。髪は緩めのアップにして、普段はあまりしないメイクも、ナチュラルだけどフルメイク。 久しぶりのデートだからって、結構気合い入れて来たんだけどな。 まったく何やってるんだろう、私。 もう、帰ろうかなぁ……。 そう思って一歩踏み出そうとしたとき、目の前に茶色のもこもことした何かが現れた。 『お嬢さん、どちらへ?』 その茶色いものが喋った。正確にはそれを持った奴がだけど。 「……どっかの誰かと約束していたはずなのに、時間になっても現れず、挙げ句の果てに連絡すら取れないから帰ろうかと思ったのよ」 「ですよねー。ごめん! メール送ったあと、充電切れちゃってさ」 あははーと乾いた笑いを浮かべた後、勢い良く頭を下げた。それはもう、見事なまでに直角に。
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