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「それじゃあ、久しぶりのデートに行きますかっ」
「えっ、ちょっと!」
そう言って不意に手を握られた。
その手は凄く温かくて、さっきまで冷たかった私の手が温かくなっていくような気がした。
手だけじゃない。胸の内も温かくなっていくようで、ドキドキと高鳴る鼓動が伝わってしまうのではないかと横目で見ると、その視線に気づいたのか、私に向かってにっこりと笑った。
「好きだよ」
――っ! 恥ずかしいことを抜けぬけと。
「……バカ」
「ん? 何か言った? ってか、俺には言ってくれないの?」
「言うわけないでしょ」
そんな可愛くないことを言って、思わず顔を背けた。
でも、繋いだ手を離すことは出来なくて、いつの間にか私の手は冷たくなんかなくなっていた。
「今日は全部アンタの奢りだからね」
「嘘っ!? 何でっ」
「遅れてきた罰よ」
「そんなぁ~」
……絶対に言ってなんかあげない。
『大好き』なんて。
――おしまい――
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