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寝室のドアがバンッと開け放たれる。
ドアの向こう側から差し込んでくる光に、目を細める。
そこで後光を一杯に受けながら、
牡丹は仁王立ちしていた。
半紙に墨汁を垂らしたようにくっきりとした黒髪。
赤いリボンにより束ねられた
ポニーテール。
すらりと伸びたスレンダーな手足。
切れ目で吊り上がった気の強そうな目。
そして……
「お前……胸無いな」
凹凸のない身体。
「一生寝てなさいゴミムシ」
「ちょ待った。今のはあれだ!深層心理で思ってたのが口に出ただけで……」
「いつもそんな事思っていたのね……」
どんどん目が冷徹になっていく牡丹と、青ざめていく仁。
「ち、違う!それは……ん?包丁?どっから出したのそれ?人に向けちゃ危ないよ!ねぇ、ねぇってばっ!」
悲痛な叫びが響き渡るいつもの朝。
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