1人が本棚に入れています
本棚に追加
『高井さんの秘書はどのくらいになるんですか?』
『もう5年程になります…』
『そうなんですか』
酒井を見ると昔を懐かしむような遠い目をしていた。
『高井とは幼なじみなんです。
高井が社長になり、職に困っていた私を秘書として雇ってくれたんです』
そうだったのか…
『そのとき高井さんはもうご結婚を…?』
『…ええ……
早苗様とご結婚しておりましたが…?』
酒井の様子を注意深く伺いながら、おれは話しを進める。
『高井さん…いえ、義晴さんとはただの社長と秘書の関係でしたか…?』
『……どう言う意味でしょうか?』
おれは彼女の目が一瞬暗く沈んだように見えた
『酒井さんと義晴さんが二人で宝石店にいたとの情報があります』
『…』
彼女の肩がピクッと震えた
『それが本当なら何故でしょうか?』
室内にあるのにも関わらず、彼女の手の甲が徐々に濡れ始める
彼女はそれも気にせずに、手に力を入れズボンを強く握りしめていた
静寂の中…時計の針が時間を刻む音と、彼女の堪えきれない嗚咽だけがおれの両耳を刺激していた。
『話してくれませんか…?』
おれは諭すように優しく微笑みかける。
最初のコメントを投稿しよう!