第一の事件(上)

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『…義晴に対して特別な感情がなかったと言えば嘘になります……』 彼女はポツリポツリと呟くように話し始めた。 『私はバツイチなんです… 結婚して会社を辞めたのですが、彼の不倫が発覚し離婚となりました。 不倫したことがどうしても許せませんでした…… そんな身も心も傷付き途方にくれていたときに、義晴に秘書にならないかと誘って貰えてたんです。 とても嬉しかった…』 彼女の微笑みはとても切ないものに見えてしまう。 笑っているのに、伝わってくる感情は悲しさだった。 『だから私は義晴のために力になりたかった。 例えどんな形でもいい…… 支えてあげたいって… ずっと…我慢してた…… でも、義晴は死んでしまった…』 彼女はポケットから小さな箱を取り出し、それを開く。 『これがその宝石店で買った指輪です。』 彼女はそう言うと、そのダイヤモンドの指輪を左手にはめた。 ダイヤモンドの指輪は光を浴びて、人差し指を包み込むようにキラキラと輝いている。 『素敵な指輪ですね…』 本当にそう思う。 それはまるで命の輝きのように眩く光輝いていた。 話が終わると彼女は指輪を大切そうに箱にしまう姿が目に見える。 大切にしてるんだな… そう思いながらおれは席を立つのだった
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