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『…義晴に対して特別な感情がなかったと言えば嘘になります……』
彼女はポツリポツリと呟くように話し始めた。
『私はバツイチなんです…
結婚して会社を辞めたのですが、彼の不倫が発覚し離婚となりました。
不倫したことがどうしても許せませんでした……
そんな身も心も傷付き途方にくれていたときに、義晴に秘書にならないかと誘って貰えてたんです。
とても嬉しかった…』
彼女の微笑みはとても切ないものに見えてしまう。
笑っているのに、伝わってくる感情は悲しさだった。
『だから私は義晴のために力になりたかった。
例えどんな形でもいい……
支えてあげたいって…
ずっと…我慢してた……
でも、義晴は死んでしまった…』
彼女はポケットから小さな箱を取り出し、それを開く。
『これがその宝石店で買った指輪です。』
彼女はそう言うと、そのダイヤモンドの指輪を左手にはめた。
ダイヤモンドの指輪は光を浴びて、人差し指を包み込むようにキラキラと輝いている。
『素敵な指輪ですね…』
本当にそう思う。
それはまるで命の輝きのように眩く光輝いていた。
話が終わると彼女は指輪を大切そうに箱にしまう姿が目に見える。
大切にしてるんだな…
そう思いながらおれは席を立つのだった
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