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(明日はお父さんの命日だ)
そう思いながら少女はバスに乗っていた。彼女が降りるバス停の近くに霊園が有り、そこに彼女の父親が眠っている。
八年前の明日、彼女の家の呼び鈴が鳴り、胸騒ぎがしていた母親が出たところ、既に事切れた父親の遺体があったのだ。
何時かこうなる事を覚悟していた母親は、遺体が帰ってきたことに少なからず安心していた。
それから警察に通報したが、碌な捜査がされることはなく、母親もそれがわかっていた。
殺したのはヴァイスのメンバー、そんなことを公表出来る訳が無く、事件は迷宮入りになる。
彼女は事件の細部を知らず、父親が死に、事件が迷宮入りになった事だけを知っている。
そうしてバスの車窓から父親の墓に目を向けると、そこで手を合わせるスーツの男を見つけた。
バスはシュヴァルツの襲撃に耐えるための特殊装甲バス。
そのバスが停留所に止まり、出口が開くと彼女は運転手に定期券を見せ、バスを駆け下りる。
彼女にはスーツの男に心当たりがあった。毎年墓参りに行くと、何時も掃除された後で先客の手向けがあったのだ。
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