初めましてと言っておこう

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(あの人はお父さんの知り合いかも知れない) 淡い期待を持ちながら、夕暮れの墓地へと駆ける彼女、人違いの可能性もあったが、確かめてみたかったのだろう。 母親は彼女を巻き込まぬため、父親の職業も死因も打ち明けなかった。そのことも聞こうと思いながら彼女は駆ける。 一方時は遡って、スーツの男、いや、一つ目の怪人は柿谷と彫られた墓を掃除し、供物を置き、線香に火を点ける。 そして、懐から博士の好きだった煙草の銘柄を取り出し、封を切って一本手に取り、手に持ったライターで火を点けた。 (博士、一年ぶりだな、毎年貴方の命日の前にはこうして墓参りに来てる。好きだった煙草の香りを楽しんでくれ。 博士は望まないかも知れないがあの日から遺族を見守ってきた。しかし博士の奥さんは強いな。 しばらくは落ち込んだが、今では立ち直って元気そのもの、だが未だに再婚する気は無いようだ。 娘さんは今年で高校一年生になってバス通学しているよ。二人に降りかかる火の粉は払っているが、悪い虫が付かないか心配だ。 最近は二人共が能力に目覚めかけている気がしてな。
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