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宮司さんの奥さんと祢宜さんの奥さんが、お供えされた鯛や野菜を調理している。
社務所の台所はいつもながら、戦時中のように慌ただしい。
や、戦時中の様子なんて知らないけどね。
私はいつも通り、社務所の奧にある大広間に座布団をたくさん並べて、大きなテーブルを綺麗に拭いた。
箸や取り皿を用意し、授与所の番をしていた権祢宜の山内さんに交代の声をかける。
「よろしくね」
「はあい」
夕方の4時には授与所を閉めるから、お金を計算して釣り銭を合わせないとならない。
バイトの時は、必ず私がやることになっていた。
「あと15分で閉めよ♪…はぁ~」
壁掛けの時計で時間を確認し、何となくリラックスして大きくため息をつく。
私は授与所でのこの時間が結構気に入っていた。
平日は御守りを受けに来る参拝客も少ない。
真夏は暑いし真冬は極寒だけど、静かに授与所で座っている1人の時間は楽しかった。
静かな境内に小鳥の囀ずりが響く。
近所の子供達の声が遠くから聞こえる。
爽やかな風が開け放した授与所の窓を吹き抜けて、私はそっと目を閉じた。
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