ホームレス

8/20
前へ
/359ページ
次へ
一瞬だけうとうとしたのか、そんなつもりはなかったんだけど。 ハッと気付いた時には、大きく開け放たれた窓の外に、1人の男が立っていた。 すらりとした長身。 肩口の破れた、汚れたTシャツ。 半袖だかノースリーブだか判然としない袖口から覗く、引き締まった二の腕。 真っ黒らしき髪の毛はボサボサと荒れていて、埃か傷みのせいか分からないが白っぽくくすんで見える。 黒く薄汚れた顔は、酷く整っていたけれど、悲しくなるくらい無表情だった。 そんな無表情な顔の、瞳だけがギラギラと私を見つめていた。 「…ッ」 咄嗟のことに息を飲み、声が出なかった。 ギラつく視線から目を離せない。 固まったままの私をしばらく睨み続けた男は、 「…待ってろよ」 嗄れた声でそう呟くと、あっという間に姿を消した。 、
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加