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一瞬だけうとうとしたのか、そんなつもりはなかったんだけど。
ハッと気付いた時には、大きく開け放たれた窓の外に、1人の男が立っていた。
すらりとした長身。
肩口の破れた、汚れたTシャツ。
半袖だかノースリーブだか判然としない袖口から覗く、引き締まった二の腕。
真っ黒らしき髪の毛はボサボサと荒れていて、埃か傷みのせいか分からないが白っぽくくすんで見える。
黒く薄汚れた顔は、酷く整っていたけれど、悲しくなるくらい無表情だった。
そんな無表情な顔の、瞳だけがギラギラと私を見つめていた。
「…ッ」
咄嗟のことに息を飲み、声が出なかった。
ギラつく視線から目を離せない。
固まったままの私をしばらく睨み続けた男は、
「…待ってろよ」
嗄れた声でそう呟くと、あっという間に姿を消した。
、
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