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次に男の姿を見たのは、受験も押し迫った寒い日の朝だった。
神棚の注連縄が切れていて不吉だと心配する母親の使いで、せっかくの休みをバイト先に出向いた日。
祢宜(ねぎ)さん特製の注連縄を受け取ると
気持ちだけ賽銭箱に入れといてと、初穂料の入った封筒を押し返された。
仕方なく本殿へ足を向けた時、異様な視線に気付いた。
授与所の横に植えられた榊のそばに立つ、男。
穴だらけの毛布を被り、上半身は全て毛布で隠れていたから妖怪のようだった。
元が何色だったのか分からないくらいに煮しめたようなズボン、足元は片方裸足。
すっぽり毛布に包まれた顔は暗く隠れていたが、鋭い眼光だけはまっすぐにこちらに向けられていた。
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