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外の木が段々と増えてきている。
空は暗くなり始めていた。
体が車の振動で揺れる。
突然、車が止まった。
『誰か』はエンジンを切ると車から降りて、後部座席に横たわっている僕を抱き上げた。
茂る草木の中に、二階建ての古い建物があった。
建物は横に長く、壁や窓にはひびが入っている。
『誰か』が僕の口に布を詰め込んだ。
僕は声を出すことができなくなった。
僕は『誰か』に支えられたまま、建物の中に連れていかれた。
独特な臭いのする建物だ。
僕はある一室の台の上に降ろされると、腕に何かをさされた。
『誰か』が手にしている物は注射器だった。
僕の顔を冷たい目で見据える『誰か』が徐々にぼやけてきた。
意識がもうろうとする。
目蓋が閉じる瞬間、『誰か』がつぶやいた気がした。
「おやすみ」
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