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そう、まるで彼女は狩猟者。銃口の先のそれに怨恨は一切無くても、無慈悲に獲物へと死を放つ。彼女から感じられる生理的悪寒は、それに似ていた。
「……確認します。貴方に、自覚はありますか? ならば私の素性も朧気にはわかるはずです」
「は……?」
そうだ――少女の雰囲気に圧倒されて気付かなかったが、何故彼女は俺に声をかけた? 薫の中で渦巻くその根本的な疑問に対する答えを、ここ1年誰とも関わらずに生きてきた彼は持ち合わせていなかった。
一段と高まるのは、不信感と焦燥感。
――どこかで、瓦礫が落ちる音がした。
「誰なんだ、あんたは……?」
今更な感もするその質問に、純白衣の少女は顔を俯ける。言い難い……いや、言いたくないのか。
ひょっとしたら、彼女と俺は本当に繋がりがあるのかもしれない。薫の中で、それは確かな可能性として芽吹いていた。
――少女は、ゆっくりと口を開く。
暗闇より現れ、薫を知り、神妙な雰囲気を纏ったその少女の名は。
「……摩耶」
「まや?」
「新堂、薫」
全てを貫かんとする凛とした瞳が、薫の双眸を捉える。痛覚すら感じるそれには、溢れんばかりの〝決意〟が秘められていた。
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