第0話――『プロローグ』――

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―――どうしてこうなった?――― 頭の中で何度もその想いを反芻する。しかし今更、何かを思ったとしてもすでに遅いとしかいえない。 ―――『後悔先に立たず』――― その言葉通り、後悔というのはいつも『何か』が起こってから起きるものなのだから… 雨が降っていたため冷たくなった道路。そこに俺の体は転がっている。なのに立ち上がることができない。まるで自分の身体じゃないみたいだ。 「おいっ!きみ、大丈夫か!」 誰かのそんな声がシャッター越しに聞こえた。 (大丈夫かって?大丈夫じゃないに決まってますよ。さっきから全身が痛くて痛くて………俺どうなってます?) けれど、口はパクパクと動くだけで、音なんか出やしない。 救急車のサイレンに人だかり。みんないったいなにを見ているんだろう?目が霞んでよく見えないのがどうにも嫌な予感を連想させる いったい、俺の身に何が起こってるんだ? 唯一動く目だけをできるかぎり下に落とす。 そして、思わず「ああ」と呟いてしまうほど理解する。 ああ、そうか。俺―――――『車に引かれたんだ』――――― 本来曲がるはずのない方向に曲がってしまっている右手を見て、それがようやく事実であるということを確認した。
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