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ゆらゆらと揺れる夢のような場所を俺は漂っていた。これが死ってやつか?
何もないんだな。死って。何も見えない。何も聞こえない。
ただ、体に何かが絡みつくような『感覚だけの世界』
もう死ぬ前に頭を支配していた『怖い』という感情は、実際、死んでみると無くなっていた
恐怖がなくなってくると、このゆらゆらと定まらない不安定な場所も、まるで、ゆりかごに揺られた赤子のようになんだか、いい気分になってくるのである
もういいさ。このまま、ゆらゆらと揺られてどこかに着くまでのんびりと昼寝でもしよう。
そんな気分になってきた矢先だった
上の方から『光る球体』がこちらに向かって飛んできた。
「えっ?」
それはゆっくりと暗がりの中を照らしながら近づいてくる
「ちょっ…待っ」
不安定に漂うだけの俺にそれを避けるすべはなかった。(なにせ、足場というものがないのだ)。そして光球は俺の額の辺りにぶつかった
(あだぁっ!)
途端にはじける光の玉。あたり一面を光が包む。ながいこと暗がりにいた俺は目が眩み、完全に居場所を見失った。またふわふわ漂う、無重力感も無くなる。途端『上』に向かって体が落ちていく。
「あわわっ!だっ、誰か助け…」
ジリジリジリジリ!!!
耳元でかけられた大音量の目覚ましの音に軽いめまいと耳鳴りを覚えながら俺は起きた。それから、あたりを見渡す。
気づけば、そこは壁一面が染み一つない白で覆われた部屋であった
ぼーっとしている頭を動かそうとするが、いまだに現実を認識できない。
けれど、『事態』だけはさらに進んでいった
少年よ…
どこからともなく声が聞こえる。あたりを見回すが声の主は見つからない
少年よ…
!!!
まただ。部屋全体に声が反響しているようだが、見渡しても声の主は見つからない。その状態に少し恐怖を覚える
「だっ、誰だよ!隠れてないで出てこいよ!」
そういったときだった
頭の上の方で何かが光を放っているのを目の端に捉えた
?上
そのまま視線を上に持ち上げる
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