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じりじりと近づいてくると、人差し指を伸ばして“とんっ”と額をこずく
「ホントはもう分かってるんじゃないんですか?自分が、『死んじゃってること』」
そうしてさらに詰め寄り、耳元に囁くように言う
「ただ認めたくないだけで」
その瞬間、脳裏に“車に引かれた瞬間”のできごとが一瞬のうちに駆け抜ける。ひしゃげた腕、砕ける骨、裂ける筋肉。感覚まで。それらが一瞬蘇り、また霞のように一瞬でかき消える。思わず、頭を抱え込む。
「嘘だ!」
「嘘なんかついてませんよ。そもそも“女神”なんてものが出てくる時点で、あなたはこの世の理(ことわり)から一旦離れてるって事ですよ?」
頭が割れるように痛い
「これは夢だ!」
「『夢』だと言われると、その可能性は否定できませんね。私が、夢の中の登場人物だとしたら………、そのことに気づくことは出来ませんからね。でも、それってひどいと思いませんですか?私は妄想の産物ですか?」
「とにかく、やめろ!」
飄々とした相手の態度に腹が立ち、思わずキッと睨みつける
「やだな~。そんな仇みたいな目で睨まないでくださいよ~。殺したのは、私じゃないですし~。」
「あんたはなんなんだ、さっきから!何のために来たんだよ!」
「それをこれから話そうとしてるんで、ちょっと、大人しくしてくれますか?ん~?」
口に人差し指を当てて、ニコニコとしている。それから明るい調子でいった
「私はチャンスを与えに来た女神様ですよ~?」
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