53人が本棚に入れています
本棚に追加
★
「よし、んじゃあ行くか。」
放課後、夕焼けが見える教室で俺は隣にいる上野にそう言ってかばんをからった。
「はい、よろしくお願いします皆城さん。 それにお二人も。」
「うん、任せてね。」
上野の言葉に嬉しそうに笑顔で藤野が返事をする。
「まぁ、俺にかかれば校内を案内するなんてお手の物だから任せときな。」
「あ、はは。 よ、よろしくお願いします。」
対して、春原は妙に渋い声色で意味のわからない説明をして上野を苦笑させていた。
「じゃあ、とりあえず校内をぐるっと一周しましょ。」
「そうだな。」
藤野の提案に俺は頷いて、何故だか更に変な事を上野に言おうとしている春原の首根っこをつかんで教室を出た。
上野と藤野もそれぞれかばんを持って教室を出る。
「おい、竜司っ 俺にこんな事したらまた異端審問にかけられるぞっ。」
「ほぉ~、やっぱりあれはお前らだったか。」
「い、いや、知らんぞ! 俺は何も知らん!」
明らかに動揺している春原。
もはや、隠す必要性がわからないのだが、念のために釘を打っとくか。
「春原」
「ん、なんだ?」
俺から解放された春原は制服の乱れを直しながら、視線だけを向けてくる。
そこに俺は、至って冷静にいつも通りに、
「今度、異端審問にかけられるときはお前も一緒だな。」
「・・・っ!!!?」
ゴガン、ゴドンと壁にぶつかりながら春原は身を震わせた。
どうやら俺が言おうとしていることがわかったらしい。
見た事もないほど身をブルブルと震わせている。
そこに更に俺はとどめと言わんばかりに、
「この事は俺の胸の中にとどめて置いてやる。」
と言って、春原に中々良い借りを作ってやった。
「よし、まずは授業で使う教室を回ろうか。」
「はい、わかりました。」
そんなことには気付かず、上野と藤野は雑談しながら校内を歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!