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「そ、そうですか。 あれが普通・・・」
「・・・どうした?」
何故だか顔を曇らせる上野に俺は言って、かばんをからい直す。
「い、いえ。 私は、幼少のころより少しは体を鍛えていたのですが、昨日の質問攻め程度で疲労しきってしまっていたので、少し自分に甘えがあったんじゃないかと思って・・・」
溜息混じりにそう告げる上野。
何かスポーツをしていて体力に自信があったんだと予想した俺は、苦笑しながら明るく
「それは、違うと思うぞ。」
「えっ?」
ちょっと自慢げに俺は、夕焼けを見ながら
「あの質問攻めに耐え切れたほうが凄いし、上野はしっかりとした性格してるから自信持って良いと思うぞ。」
「そ、そうなのでしょうか?」
まだ、少し納得し切れていないと言った表情の上野。
その瞳には、かすかな迷いの色が見え隠れしていた。
「まぁ、だから気にするな。 これからあのクラスにいる内に慣れていくさ。」
「そ、それならいいのですが。」
とりあえず、言う事は言った俺は坂を下ったところにある交差点を見て、
「上野は、どっちなんだ?」
と、交差点の二つの道を指差した。
すると、上野は意外にも
「こっちです。」
と、言って俺の家の方角と同じ方を指差した。
「なら、まだ一緒か。」
言って、俺は信号が変わったところを見計らって横断歩道を歩き出した。
上野も同じくそれについてくる。
それから5分程、たわいのない会話をして俺は家の前まで着いた所で上野を振り返って、
「俺は、ここだけど上野はまだこの先か?」
と言ったら、上野は、いえ、と言って
「私の家はここなんです。」
「ここって、」
上野が指差した家を俺はマジマジと見つめた。
日本伝統系な木造の家で、大部分は道場に使うのであろう稽古場がある。
そして、その奥に道場と繋がった木造の家がある。
確か、最近建ったばかりの家で剣道の道場を開くとか言っていた家だ。
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